2023年3月8日水曜日

吉田修一:「永遠(とは)と横道世之介」

 横道世之介シリーズの完結編であることはタイトルから想像がつく。これは新聞の連載で読んだものである。と言っても細切れで読んだわけではない。というのは私は新聞のデジタル版の購読者なので、こういう連載小説はHPのアーカイブスのようなところに全部保管されているのでまとめ読みが可能なので、これは本当に便利だ。この連載物が後に加筆訂正されて単行本として発売されるのだが基本は変わるはずもないので愛用している。

時は2007年、横道世之介38歳。舞台は吉祥寺のとある食事賄い付きの昭和を思わせる下宿屋「ドーミー吉祥寺南、あけみさんが賄い担当の経営者。で、いつの間にか横道君は事実婚という間柄の下宿人。プロの写真家と言っても学校の修学旅行の動向カメラマンであったり、師匠のの南郷先生の助手としての雑用をこなし、地味な週刊誌の写真をスポットで受けたりしてのマイペース。そのマイペースさが周りに自然と和んだ空気の対流を産み出し、色んなものを溶かしていく。その中心にいるのが横道世之介なのだ。本人の自覚は全くない。2007年かに高野馬場だったでか、線路に落っこちた人を助けようと飛び降りた日本人と韓国人の2人が電車に惹かれて亡くなった事故をヒントに掛かれたのかもしれない。世之介の最後の手紙にこんな一節がある。

人生ってさ、自分のためだけに使っても時間が余るような気がするんだ。

 誰かのためにその時間を使えるなんて、そんな幸せな人生はない。それが大切な人や困ってる人のためだとしたら、これほど気持ちのいい人生はないと俺は思います。

読み終わって懐かしい横道世之介に別れを告げたい。世の中のあちこちにいる何気ない顔をして生きている大勢の横道世之介さん、どうもありがとう。

吉田修一:「永遠(とは)と横道世之介」

 横道世之介シリーズの完結編であることはタイトルから想像がつく。これは新聞の連載で読んだものである。と言っても細切れで読んだわけではない。というのは私は新聞のデジタル版の購読者なので、こういう連載小説はHPのアーカイブスのようなところに全部保管されているのでまとめ読みが可能なので...