宮本輝さんの作品。阪神淡路大震災の後、2~3年した世相を背景にした作品でした。あれ以上の災害はこの世では起きないのではないかと思っていましたけど現実には16年後に東日本大震災が、おまけに福島原発事故まで誘発して、被害の大小を比較するわけではないですが実際には原発事故の方が人類にとってはより根源的な問題を投げかけ、「事実は小説より奇なり」を地で行くような経験をしている訳ですね。あの阪神淡路を経験した宮本輝がどうしても書き残したことの1つがこの小説の主題なのでしょうね?震災を経験した後主人公は長年何事にも、ちぐはぐで共感できないままに過ごしてきた妻と離婚し、ハンザという地に旅をしたり、生きる目標を失いかけています。仕事でも研究職を解かれ、いきなり大阪に営業職として転勤させられてから狂い続けてきた歯車を見つめ直し何か出直しのキッカケを掴もうとしていたのでしょうか?頼りなげに生きてきた主人公は、しかし、その大阪で仕事を通して一人の親友を得ました。この友人との交流の中から何かを掴み取っていくのでしょうね。上巻だけでの感想はこんなところです。映画化されたからか、上巻はすぐ借りれたのに下巻は10人待ちとは不思議ですが仕方ありません。
話が違いますが、この原作が映画化されて先週までは上映中でしたが観損ないました。あちこちのシネコン、どこででも上映中でしたのに、この一斉に公開し、一斉に終了する経営感覚もおかしなものですね。ちょっと見損なったら最後、次に見直すチャンスはなかなか巡ってきません。芸術(?)のこういう消費のされ方というのは本当に勿体ないという気がします。大学の入試ではありませんが、期間をずらして順次上映するようにすればトータルとしての売り上げも増え、1本の映画に掛ける費用も少し多くなり、果てしない消耗戦を強いられることもなくなるような気がしますけどねぇ。制作者・配給する側・観客の3者にとって、もっと上手なwin-winの関係も築けるような気がします。
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