2016年4月18日月曜日

三浦しをん:「まほろ駅前狂騒曲」

3部作の最終編が図書館からやってきた。多田便利軒の多田さんと居候を決め込みながらも、何となく多田さんをバックアップする行天くん、この2人のトラウマが次第に明らかになってくる。その謎を解くカギは子供が絡む問題を持ち込まれる度に、見えてくる。行天くんは結局、新興宗教にハマった母親から虐待に近い(母親からすれば神に近づくための行であったらしいのだが)扱いを受けて親を逃れ、それでも自分も子供を追い込んでいく親の遺伝子を受け継いでいるのではないかという恐れで、子供にも、従って結婚にも近づかず、逃げ回っている。しかし、子供を単に欲しいだけの女性(何かを研究している学者)とどこかで出会い、偽装結婚した子供がどこかにいるらしい。今回のシリーズでは、新興宗教の流れを持った自然農法の野菜の生産・販売団体の子供を救出する仕事に加え、行天くんの離婚した奥さんから海外出張のために1.5か月だけ子供を預かってほしいという依頼を受けて懸案が一挙に解決へと向かう。行天くんもはなちゃんという本当は自分の子供だったことも承知で表面上はともかく内面では何とか子供虐待することもなく、相手できることを確認していく。また、多田さんの方もいつも行く食堂の女経営者を憎からず思っていたのだが、その女性との出会いは亡くしたご主人の遺品の整理というお仕事が切っ掛けだったのだ。この恋愛が次第に実りだしたのを察知した行天くんは邪魔にならないように飄然と姿を消す。居候でいられた間は邪魔ものにしか考えてこなかった多田くんも相棒を失ってみて、寂しさが募る。この辺りは中々泣かせる。最後は・・・まぁ、ハッピーエンドとだけ書かせて貰おう。映画ではここまでを含めた作品にはなっていなかった。通して読めば映画より作品の方が出来は良い感じがする。

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