映画が人々に与える影響は現在と以前(そう少なくとも1970年代までは)とでは比較にならない。映像の訴えるメッセージは文字に比べ強烈だ。まして戦前は大変なものだったろう。そこに権力をもった面々が関心を抱いたのは当然だったろう。戦前からの検閲の歴史がそれだ。そして第2次大戦後、占領軍司令部(GHQ)もこれを利用した日本人の民主化教宣活動が行われた。副題に「アメリカ占領下の日本映画検閲」とあるが、戦前にも相当の紙幅を割いている。こういう面から当時のアメリカが日本の天皇制をどう見ていたかという切り口にも新鮮味を覚えた。
本書は検閲の歴史を残された文書、映画台本などを克明に分析整理し、歴史に残してくれた貴重な図書といえる。今でこそ何の制約もなしに作られる無数の映像作品の中から、印象に残るもの・感銘を覚えるものなど見分けるのに苦労するほどの状況からは想像もできないことだが、数少ない映像作品しか与えられなかった一般国民がそこに込められていた各種のメッセージに知らず知らずに多大な影響を受けていたわけで、そこに時の権力が関与していた模様が詳細にトレースされていて興味深い。図書館から借りて読むには大作過ぎて読みきれない。気力を持って読み進めないと時間に追われて挫折してしまいそうで、最後は申し訳ないが飛ばし読みしてしまった。ただ、気になることが出た時に参照してみるに値する図書として記憶しておきたい。
著者の略歴を紹介する。
1952年東京生まれ、早稲田大学。1976年、ベオグラード大学大学院・演劇映画テレビ・アカデミーに留学、以降ニューヨーク大学大学院・映画研究科博士課程を経て、1988年に同大学院博士号取得まで学究の道を歩まれ、研究成果の博士論文は1992年にアメリカで出版され、1998年に「天皇と接吻-アメリカ占領下の日本映画検閲」のタイトルで、その日本語版が刊行されました。一方、1986年~2004年ニューヨーク・ジャパン・ソサエティーの映画部門ディレクターとしても活躍しアメリカにおける日本映画紹介に献身的に尽くし、1999年第17回川喜多賞を受賞。
2007年9月10日月曜日
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