2010年3月12日金曜日

塩野七生:「ローマ人の物語」その2

何から感想を書き始めてよいのか迷ってしまう。以前に読んだところはすっかり忘れてしまっている。やはり全体を通して印象に残っている所から書いてみよう。

ローマという国は地中海のあの長靴の形をしたイタリア半島からエジプト、リビアなどのアフリカ大陸の地中海沿岸、ヨーロッパではスペイン、イングランドの半分、ライン川の南岸、ドナウ川の南岸、そしてトルコからイラク、パレスチナ辺りまでの版図を固定化して国家経営に乗り出した所謂ローマ帝国の完成でその全盛期に達する。これだけの広大な領域を一つの国家として経営して行くためには初期の共和制のような民主的な体制では意思決定が遅くて通用しなくなり皇帝制に移行していった。その効率的な政治形態としての皇帝制での皇帝の使命とはいったいどんなことだったのか?著者は繰り返しこの皇帝の使命について書いている。

ローマ帝国における皇帝の役割とは?
それは安全の確保(保障)だった。
・先ず国境線の内側での平和、安全の保障だ。蛮族の侵入を阻止する。
・国内の安全な移動を保障する
・生活の安定(衣食住)を保障する
これらを総称して、パクス・ロマーナ(ローマの平和)を守り、維持して行くのが、何よりも大事な皇帝の役割であった。
昨今の日本の政治家にこの役割の認識があるのか?何を志して政治家になったのか?尋ねたくなる。一国の首相になったら、国民のために何を考え、行動の規範にしなければならないのか、ローマ帝国の成り立ちとその発展から衰退への経過をおさらいするだけで多くの教訓を得ることができる。この本は政治家を志すものの必読書であり、必須科目であるように思える。 紀元1世紀前後のローマ皇帝はこの使命感に燃えて帝国の蛮族が跋扈する国境前線を駆け巡っていたのである。国を治めるとはどういうことを求められているのか今の日本の政治家は判っているのだろうか?質問にきちっと答えられるのだろうか?

0 件のコメント:

コメントを投稿

吉田修一:「永遠(とは)と横道世之介」

 横道世之介シリーズの完結編であることはタイトルから想像がつく。これは新聞の連載で読んだものである。と言っても細切れで読んだわけではない。というのは私は新聞のデジタル版の購読者なので、こういう連載小説はHPのアーカイブスのようなところに全部保管されているのでまとめ読みが可能なので...