2012年1月7日土曜日

久木綾子:「見残しの塔」

九木綾子という人は、1919年東京生まれといいますから、多分今年93歳になろうかと思われます。その方の処女作は2008年、この「見残しの塔」だったのだそうです。この時すでに89歳だったそうです。この人と作品のことはNHKのラジオ深夜便で知りました。去年の確か7月頃だったと思います。小説に取り組みだしたのが平成元年とありました。構想14年、執筆に4年掛けたのだそうです。平成16年から19年にかけて「周防の国 五重塔縁起」の題名で「文芸山口」に連載されたそうです。「嘉吉二年二月六日/此のふでぬし弐七/年みずのえいぬむま(うま)時」・・・・山口にある瑠璃光寺の五重塔の解体工事の時に発見された巻斗(五重塔を支える一本の側柱の斗形(ますがた)に書かれた花押。これを見た作者が著したいと心底から念願してこの物語ができました。この五重塔は日本3大5重塔の1つといわれるほどの美しい塔だそうです。壮大なスケールのロマンに仕上がっていました。そして、あとがきに記した著者の色んな方々に教えを乞うたその経緯が綴られていて、これを読んだだけでどれほど丁寧に勉強して書かれたものなのかを実感しました。専門家でないものがこれだけを書くには各界の学識と色んな知識が無くては書けないでしょうね。この高齢でこのスケールの大きな発想、そしてじっくりと書き進めていった持続力に脱帽です。この方はさらに、もう1冊、今度は「羽黒山」に由来するお話を書かれました。次はそれを読もうと思っています。凄い!

0 件のコメント:

コメントを投稿

吉田修一:「永遠(とは)と横道世之介」

 横道世之介シリーズの完結編であることはタイトルから想像がつく。これは新聞の連載で読んだものである。と言っても細切れで読んだわけではない。というのは私は新聞のデジタル版の購読者なので、こういう連載小説はHPのアーカイブスのようなところに全部保管されているのでまとめ読みが可能なので...