2012年5月21日月曜日

佐々木譲:「警官の血」

同じ警官の姿を3代にわたって警官を職業とする人生を選ぶ家族の姿を描いた大河小説でした。時代としては終戦・戦後から始まり、平成10年代の到る約60年の間の出来事の中に3代の人々の人生が埋め込まれていました。戦後の戦災孤児や浮浪者がうごめく上野などの時代の模様や共産党の活動(闘争?)、赤軍派の活動の中で警官としての活動を強いられたり、麻薬や拳銃の密輸・密売の摘発などの事件の中で警察組織の論理や矛盾を描き、翻弄されていく一介のサラリーマンでもある警官の話でした。

考えてみると警官という職業を選んだ人の気持ちを深く考えたことはこれまで全くありませんでした。実は自分の父親もまた警官人生であったのです。ただ、私が生まれる1月前に亡くなっていて、父親の顔を全く知らずに育ったので父親の職業というものに対する関心も全く生まれなかったというのが実態です。母親が家庭人としての父のことは別として職業人としての父親像をあまり伝えてくれなかったからかもしれません。伝えてくれなかったというより伝えるべきものことをどこまで知っていたのか?恐らく知らなかったのではないかと思います。昔気質で勉強家であった父親像が自分の父親像です。尋常小学校を卒業しただけで給仕から始まった警察官人生だったようです。奥能登の駐在さんを転々としながら勉強をして昇進試験を重ねて、田舎の水飲み百姓の子供だったのが、東京の警察大学校を卒業するまでになり、大きな町や市の警察署長を歴任するほどまでに昇進したらしいのです。東京に数年間生活したことを知ったのは自分が高校生になったころだったように思います。ひょんな本との出会いから、長い間あまり思い出しもしなかった自分のルーツのことなどを思い出させられました。

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