2012年12月20日木曜日

角田光代:「8日目の蝉」

第2回中央公論文芸賞受賞作で近年映画にもなった作品を読み終わりました。恋を実らせるために彼の求めに応じて妊娠中絶し、挙句の果てに彼は別の女性と結婚し、おまけに自分は二度と子供の産めない体になり、絶望的になった若い女性が、元彼が結婚して産まれた乳児を(そうするつもりはなかったのですが)誘拐してしまう。そして逃げて逃げまくり小豆島で束の間の幸せを味わう。こうした究極の条件設定の中で女性作家にしか描けない女性心理をきめ細かに描いた作品でした。誘拐させられた女の子が成人してからも続く心の葛藤(どうして自分が人生を狂わされて迷路のような人生を歩まなければならないのか?)と闘い、誘拐した女性がその後、自分の犯した罪に苦しみ、尚且つ、誘拐した子供との3年弱の生活を愛おしく思い、あの子供の行く末に対する贖罪の気持ちと捨てきれぬ愛情抱いて、小豆島を目の前にして立ちすくんで過ごす日々。心揺さぶるラストの章が冴えていました。女性作家でなければ描けない秀作だと思いました。

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吉田修一:「永遠(とは)と横道世之介」

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