2013年11月16日土曜日
宮本輝:「星宿海への道」
またまたこの人の本に戻ってきました。この人の本では悲惨な生い立ちの人、不幸な人たちが良く出てきますが皆、一生懸命に生き、真面目に生きている人が描かれています。そしてその人の周りに必ず善人が現れます。何かを追い求め、懸命に生きる、たとえ行方不明になっていく人の生き様にも悲惨さではなく、何かを追い求めて生きて行った人の軌跡が不思議にも理解できるように感じさせてくれます。この小説でも、戦後30年代の朝鮮特需が始まる前(高度成長期の前段)の貧しい時代に、橋の下で暮らす盲目で下肢の不自由な母とその母になついて離れない子供が大阪の淀川の傍にいました。「泥の河」と同じ舞台でしょう。その子供がある経緯があって僕の義兄になります。義兄は学校も良くできましたが中学を出るとおもちゃ製造会社に勤めます。クラシックな玩具専業で、パッとしないのですが、そういう玩具をこよなく愛する人がまた必ずいて細々と成り立っています。もう定年真近かになって、ツアーでタクラマカン砂漠に行き、そこで忽然と姿を消してしまいます。結婚を約束した若い女性に手紙を出した数日後のことです。どうしてそうなったのか、そうしたのか謎を知りたいと僕は現地に行き、またあの乞食をしていた母のルーツを調べたりします。「星宿海」とは、黄河の源流地域のことを言うらしくて、そこはヒョウタンのような壺から湧き出す水が至る所にある海のようなところで、しかし誰も行ったことがないところのことです。どうして憧れていた黄河源流とは1000kmも離れたタクラマカン砂漠で消えたのか、生まれてくる子供に付けてほしいと告げた名前は「せつ」・・・実の母親の名前だったのです。どうしても母親に幸せになってもらいたかったのでしょうか?それにしてもならばなぜ消えて行ったのか?謎だらけの中で、何故か出てくる人間群像がみな、良き心根の持ち主ばかりに見えてきました。
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