2015年1月22日木曜日
岩城けい:「さようなら、オレンジ」
これはやはり私小説かもしれない。自分の生まれ育った土地を遠く離れたオーストラリアのある田舎町らしいその土地で格闘する一人は自分、もう一人はたぶんアフリカの紛争地から逃れてきた難民サリマ。サリマは英語も判らず、ろくな教育ももちろん受けていない。最初は夫が勤めていたスーパーマーケットの魚や肉を切り分ける仕事、夫は数ヶ月で投げ出すほど血と獣の匂いに1日中まみれ、息苦しくなるほどの職場に自分が代わって入った。夫は仕事も家族も捨ててどこか都会へ出て行ってしまい、その後の家族を自分は守らなければならない。職場が嫌とかぜいたくを言ってられない。もう一人の主人公私はやはり日本人の夫とこのオーストラリアで暮らす。夫は学者らしいがあまり家庭的とは言えない、放り出されたような私。私は文学好きで物書きを目指している。この二人を軸に、オーストラリアの移民社会の片隅の底辺でもがく人々の姿を描いている。自分の心の支えは恩師のジョーンズ先生で、折に触れ手紙で心境や悩み、そしてサリマのことなど身辺を報告する。この日常と手紙の2重奏で物語が進んでいく。私とサリマの接点は外国人向けの英語教室。いろんな国から来た人たちが理解度もマチマチながら一つの教室で学ぶ。そして生徒同士の交流があり、その中でサリマが力強く成長していく。新鮮なストーリーだった。読んでいくにつれ登場してくるみんなを応援したくなってくる。表題のオレンジはどうやらアフリカでサリマが見ていた記憶にある夜明けの太陽に照らされた大地の色のように思えた。第29回太宰治賞受賞作。
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吉田修一:「永遠(とは)と横道世之介」
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