2016年の第155回芥川賞受賞作。純文学の基準がよく分からないがこんな面白い芥川賞受賞作を読んだのは初めてのような気がする。現代社会の象徴的な「コンビニ」を活き生きと描いている。どういうタイムスケジュールで動いているのか、そこで働く人たちの生態もよく分かる。そこに自分がどうも人間の顔をしているが人並みの振る舞いができないと分かっている古倉さんがアルバイトで勤め始め、マニュアルを一から教育され、何か人並みに振舞う基準を与えられたと感じて人間としてスタートしたかのように感じて、プライベートな時間もすべて翌日のアルバイトに合わせて体調を調整し、万全を尽くす。コンビニ人間の誕生だ。コンビニで接する社員や来客を通して人間をクールに観察し、取り入れられることは取り入れて人間らしく振舞い続ける。大学を卒業してからも就職はせず、ひたすらコンビニのアルバイト業にまい進する。そのうち、白羽さんという婚活のためにアルバイトに応募してきた中年男をひょんなきっかけで自宅に引き取る(本人は飼う、と称している)。あれほど打ち込んできたコンビニのアルバイト社員を辞めることになって生きる目標を失った古倉さんは白羽さんに勧められて就活に出かけるが、そこで時間調整に立ち寄ったコンビニが不慣れなバイトさんと人手不足でパニックに陥っているのを見かけて俄然本能が目覚めるかのように活躍しだし、自分のあるべき場所を再確認していく。ネタばらしのようになってしまった。次にどんな作品を書くのだろうかと心配と期待感も加わる作品だった。
2020年8月16日日曜日
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