2021年5月3日月曜日

夏川草介:「神様のカルテ」

 想定通り、神様のカルテ0が全体のイントロになっていて、この「神様のカルテ」は、大学卒業して5年、すっかり本庄病院の中堅医師。といっても上司のない会長の下には主人公、栗原一止、あとは研修医が2名(研修医は今年卒業した医師見習いで1年後はどこに行くかは分からない)いるだけの小所帯であることは就職して以来変わらない。一番大きな変化はその栗原先生は新婚1年目。前作で唐突に冬の常念~蝶が岳(まだ登山を楽しんでいた時に歩いたことを思い出す思い入れのある山々です。)に登場し、人を助けた小柄な若い女性写真家がこの栗原先生の愛妻だった。本庄病院は「24時間、365日対応」を標榜する松本市の駅に近いところの中核病院だ。もう一つの大きな出来事は母校から外科に同級生だったクマのような大男、砂山次郎が派遣されてくる。すでに29歳、日々死に物狂いで働くこの栗原先生に母校の医局から誘いの声が掛かる。大学では先端医学を学ぶことができる、だが大学病院では見てもらえないような末期の患者を誰が救うのか?死を前に途方に暮れる患者に手を差し伸べる医者になりたくて自分は本庄病院に就職したのではなかったのか?悩む栗原先生に入院患者の安曇さんが答えをくれた。

この作者、夏川草介はお酒が結構好きなのかもしれない。お酒を飲むシーンが結構多い。そしてそこに登場してくるお酒の種類、銘柄が凝っている。いつもは住んでいる昔は旅館だった「御岳荘」の同居人、通称「男爵」が無類のスコッチ好きで時々、聞いたこともない銘柄のスコッチを持ち出してくる。「神様のカルテ0」ではマクダフ16年物が出てきたが、本編では栗原先生が愛する日本酒の数々が、居酒屋「久兵衛」で登場する。「呉春」(大阪池田)「夜明け前」(辰野)、「佐久の花」(長野)、「飛露喜」(福島)などなど。


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