2022年3月16日水曜日

五木寛之:「人間の運命」

 友人のNさんから送られてきた本。五木寛之は深く「歎異抄」を読み込んでいるようだ。自分は高校生時代に手に取ったことがあったが数ページ読んでとても手に負えないとギブアップした記憶だけはある。人間の運営とは何なのか?運命は変えられるのか?という壮大なテーマに取り組んだ2009年の力作のようだ。あとがきにこうある。

「運命に身をまかせる気はない。しかし、運命に逆らうこともできない。そこでできることは、ありのままの自己のうんめいを「明らかに究める」ことだけだ。自分の運命をみつめ、祖の流れをみきわめ、それを受け入れる覚悟を決めることである。そのことによってのみ、運命にもてあそばれるのではなく、運命の流れとともに生きることが可能になるのではないか。私は、やっと今そんな風に前向きにうんめいについて感じられるようになってきた。」

加島祥造の「受け入れる」に通じるものを感じた。

2022年3月8日火曜日

吉田修一:「続横道世之介」

 前作が大学入学から1年を描いた、その続編は5年掛かって大学は卒業したものの、世の中は就職氷河期に突入していて、どこにも就職口がない。エントリーしても落ち続ける世之介の姿だった。ここでも1年を描きながら筆は先々のことにも自由に飛んでいく。飄々と生きる善意の塊のようであり、時に流され続けていく世之介を描いている。色んな人との出会いの中で、愛すべき世之介は人を癒し、いつの間にか消えていく。そして人は人生の節目節目でかってであった横道世之介のことをふっと思い出すのだ。


2022年3月1日火曜日

吉田修一:「横道世之介」

 毎日新聞のデジタル版を購読しています。カルチャーランを開けると過去に連載した小説がいくつか閲覧できます。抜けなく全編を閲覧できるのでまとめ読みができて便利です。今回は、2008年頃に連載されたらしい小説を見つけました。そしてどうやらシリーズになっているらしいことを知り、図書館から借りて読みました。横道世之介という風変わりな名前の若者の大学入学から1年間の物語ですが、時空超えて40年ほどの年月が書き込まれていました。今連載されている「永遠と横道世之介」の前にもう1冊上梓しているらしいのでそれも予約しようと思っています。以前、山手線でホームから転落した人を助けようとして線路に飛び降りた日本人と韓国人の2人が皆、亡くなったという痛ましい事故がありました。その事故を題材に取り込んだような、だけどほっこりとした味を漂わせた作品でした。


吉田修一:「永遠(とは)と横道世之介」

 横道世之介シリーズの完結編であることはタイトルから想像がつく。これは新聞の連載で読んだものである。と言っても細切れで読んだわけではない。というのは私は新聞のデジタル版の購読者なので、こういう連載小説はHPのアーカイブスのようなところに全部保管されているのでまとめ読みが可能なので...