2022年8月2日火曜日

高田郁:「みをつくし献立帖」

 みをつくし料理帖全10巻に出てきた料理レシピを1冊に纏めたレシピ本だが、ひと工夫してあって、全10巻での一寸したエピソードや思い入れなどが間に入っている。例えば、御台所町という町名や火事で燃えた後の2件目のつる屋のあった俎板橋辺りを舞台設定に選んだ経緯、お化け稲荷というのが実在したことなど興味深い。江戸名所図会を丹念に調べているのですね。大坂での大洪水もきちんと記録していた人がいたんですね。その人の名は曲亭馬琴(滝沢馬琴)だそうです。作中の淸右衛門先生のことのようです。

本題のレシピだが、以前にも紹介したように大体今の物価にして600円から1,000円ほどのお手頃価格で町民向けに商売をしてきたというだけあって、庶民的で家でもまねできそうな簡単レシピが多い。手元に置いておくと何かと便利と思わせるようなレシピが大半だ。作者は自分で手作りで試作を重ね、それを紹介しているところが泣かせる。料理につけた名前が興味と食欲をそそる。いくつか、例を挙げる。

・はてなの飯(鰹を味付けして混ぜご飯に)
・蓮の実の粥(塩で味を調える)
・ぴりから鰹田麩(出汁の鰹の残りを使ったデンブ)
・独活と若布の酢味噌和え
・梅と茗荷とゴマの握り飯
・素揚げの牛蒡
・焼きソラマメ
・白尽くし雪見鍋(鱈、白ネギ、しめじを出汁、しょうゆ、酒でひと茹でし大根おろし、柚子などを散らして完成)
・浅蜊の御神酒蒸し
・山芋の磯部揚げ(すりおろした大和芋を浅草海苔で包んで揚げる)
・忍び瓜(キュウリを軽く茹で、適当な調味料で味付け、シャキシャキ感が良い)
・里芋の黒胡麻餡かけ
・蓮根の射込み
・ありえねぇ(キュウリ、茹で蛸の削ぎ切りを出汁、酢醤油で味を調え、新生姜を針生姜にしてかける)
・大根葉と雑魚の甘辛煮

巻末にレシピを載せてあるも多々あった。
・トロトロ茶碗蒸し、ほっこり酒粕汁、里の白雪、ほろにが蕗ご飯、大根の油焼き、牡蛎の宝船、鯛の福探し、こんがり焼き柿、ふわり菊花雪
料理名は凝っているが内容はどれも家庭料理的なものばかり。とても参考になったがみんな忘れてしまう。

・牡蛎の宝船・・・日高昆布を舟形にし、中に牡蛎を敷き、コンロで焼き、酒蒸しにする。
・鯛の福探し・・・タイの骨を丹念に漁ると9つの小骨が見つかるという。昆布を焼いて船に見立て、中に鯛の焼き物をほぐし易いように
・哀し柚べし・・・又次が残していったゆべし

詳細は本を買ってみてください!




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