2006年8月10日木曜日

映画:「ゆれる」

原案・監督・脚本:西川美和による2006年カンヌ国際映画祭出品を観た。
出演:オダギリジョー(弟)、香川照之(兄)、伊武雅刀(父)、真木よう子(幼なじみ)、蟹江敬三(叔父)

田舎の閉鎖社会を飛び出して東京で成功したカメラマンの弟と田舎でガソリンスタンドを経営する父、手伝う温厚で弟思いだがパッとしない独身の兄。兄と弟の表面的な兄弟愛が、幼なじみを挟んで揺れ動く。幼なじみの智恵子も猛に東京へ連れて行けと迫る。そんな中、兄弟と智恵子3人で幼いころ両親に連れて行ってもらった渓谷に遊びに行き、そこで兄は智恵子をつり橋から落として死なせてしまう。弟は兄を救うため奔走し、やはり東京に出て頑張っている弁護士の叔父を口説き落として無罪を勝ち取る寸前までいく。しかし、何回かの面会を通して弟はいつもやさしく親切だった兄の別の面(弟への羨望、嫉妬、自己嫌悪など)を見せ付けられ、最後に意外な行動に出る。この兄弟の屈折をかなり上手に描き出して緊迫感があった。本当にこの兄弟愛は見せ掛けだけだったのか、それとも根本のところで繋がっていたのか・・・映画を観てください。
兄と弟、父と叔父、それぞれ地元に残ったものと飛び出したものの間の微妙な空気は昔の自分たちの世代には強く存在を意識させられたものだったが、今の社会にも連綿と残っているというのは、「そうだろう」という思いと「へぇー、いまでも?」という気持ちとを抱かせるものだった。秀作。

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