2007年8月6日月曜日

読書の後整理2:「黒船前後、志士と経済」服部之総著を読んで

二つ目の成る程は、幕末の世情というか、何故豪農や商家から沢山の浪士が出たりしたのか、という問いに対する何がしかの答えを得たことである。

幕末はやはり封建制度が近代資本主義的な芽生えで崩壊しはじめていたことが大きかったようだ。特に、1858年の和親条約を締結し、長崎・横浜・函館を開港したあとの貿易が急増し、物価高騰(インフレ)が起き困窮者が急増した。また、オランダやイギリスからの新知識が流入し、知識革命が起きた。これらの知的な刺激を受けやすい立場にいたのが、豪農や商家の子息たちであったりして、正義感や世の中の矛盾を何とかしたいという志を抱いた若者たちに浪士への道を歩ませたようだ。これに政治が尊王といい、攘夷といい新時代を示唆するスローガンは欲求不満を吸収していく格好のキャッチコピーであったのだろう。政治がこれらの若者を利用し、その力を借りて時代の歯車を回していったのだろう。
<table width="75%" cellspacing="2" cellpadding="2" border="1">
<tr>
<td align="center">年次</td>
<td align="center">輸出(ドル)</td>
<td align="center">輸入(ドル)</td>
<td align="center">総計(ドル)</td>
</tr>
<tr>
<td align="center">1859年</td>
<td align="right">1,200,000</td>
<td align="right">750,000</td>
<td align="right">1,950,000</td>
</tr>
<tr>
<td align="center">1863年</td>
<td align="right">6,059,000</td>
<td align="right">2,197,000</td>
<td align="right">8,256,000</td>
</tr>
</table>
圧倒的な欧米社会がもたらす産業革命の成果の前に、それまでの徳川時代の価値観、経済体制の崩壊が若者たちを変革へと駆り立てていった様子が読み取れて面白かった。

現在もある意味では明治維新期に匹敵するような価値観の喪失、グローバリゼーション化、原理資本主義ともいえる経済戦争の中で混乱が巻き起こっているといえるのかもしれない。今から140~50年前の世相を想い、その後の日本の歩みを知ることはこれからの国際社会の中の日本を考える上で大切な視点だと、つくづく感じてしまうところだ。

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