2冊続けて、自伝的青春物語でした。
青春時代の鬱々とした出口のないもやもやした気分が全編に溢れる好感の持てる佳作でした。アメリカ文学の翻訳家として身を立てたいとの思いはあるものの、英語力や才能に自信もなくまた、取っ掛かりもなく、まして裕福でもない親のすねをかじりながら鬱勃とした日々を送る作者の自伝的青春小説でしたが、この前に読んだものと比べると、心情的には同感できる部分の多い本でした。年代的には自分より10年ほど年長者でしょうか、昭和30年代前半の時代の貧しい時代、東京にはまだ路面電車が沢山走っていて、学生向けの喫茶店や顔を見て何を頼んでも料金がいつも同じお寿司屋さんがあったりして「3丁目の夕日」のような雰囲気も伝わってきました。現代アメリカ文学のスラングに首をひねり、作中に出てくる”クリネックス”や”ピザや”ハンバーガ”っていったいどんなものなのだろう?コーラもやっと飲んでみたけど、その内、ピザも日本で食べられるようになるんだろうか?そもそもそんな理解のレベルで翻訳家になれるのだろうか?無理だよね、といった感覚で、でもアメリカ映画でゲイリー・クーパーやスージー・パーカー(とてもチャーミングらしいけど自分は知らない女優さん)に感激したりしている様子が面白い。当時の学生が抱くアメリカへの憧れが色濃く文面の到るところから立ち上る。憧れるが「遠いアメリカ」なのです。先輩の翻訳家に紹介されてできた新劇劇団の恋人に「あなたならきっと大丈夫よ」励まされ、少しづつ翻訳の仕事が廻ってくるようになるまでの4年間を4つの短編にまとめ、4編で1つの物語に完結していました。「遠いアメリカ」、父親との関係に主体をおいた{「アル・カポネの父たち」、母親との関係に主体をおいた「おふくろとアップル・パイ」、翻訳家として初めての出版となる本に出てくる服の色と重ねあわせた「黄色のサマー・ドレス」の4編だ。最初の「遠いアメリカ」と最後の「黄色のサマー・ドレス」が良かった。
2013年1月3日木曜日
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