2013年12月18日水曜日

宮本輝:「水のかたち」(上)

また宮本輝の世界に戻ってきてしまいました。

この人の新しい本を見付けると手に取らないわけにはいかない気持ちにさせられます。今度の主人公は想像ですがおっとりとさしたる苦労もしないで平凡に、しかもクリーンにというか正直に生きてきた感受性豊かなご婦人です。年は50歳代前半で姉が一人います。姉は結婚に失敗して実家で母親と同居しています。この主人公が懇意にしていた骨董屋の「カササギ堂」廃業に当って女主人から好きなものがあったら持って行ってほしいと言われて2階の山のようなガラクタか何かわからない道具類の中から2点だけを選び出して貰い受けます。1つは志野の焼き物、もう1つは手文庫風の物入れでした。この2つはそれぞれ中々心を落ち着ける物のようでしたが、それが大化けして物語が展開していきます。お茶碗の方はとても様子が良いもので昔、道具類の見分け方を教えてくれた老人に見せた所、大変な名品だと判り修理して売却します。好事家か公共のどこかが所蔵して多くの人たちに見てもらえるようにした方が良いとの判断からでしたが結果的には3千万円という値段で売れてしまうのです。そしてもう1つの手文庫からは古い古い日記帳が出てきたのです。その日記には去る太平洋戦争終了時に今の北朝鮮の清津という所から日本に脱出しようとして船を雇い百数十人の同胞の人たちと共に南に逃れたときの日記が記されていたのです。人の縁が色々繋がり多くの人たちの人生が見えてくるのです。面白いです。ようやく上巻を読み終えましたので早速、下巻を予約したいと思っています。

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