2014年8月4日月曜日
浅田次郎:「月下の恋人」
「小説宝石」という雑誌は確かに存在したのは記憶にあるが現存しているかは知らない。恐らく続いているのではないだろうか?その本の2001年9月号から2004年11月号までに11回に亘って掲載された掌編をまとめて1冊にしたもので、タイトルはその中の最後から1つ前のタイトルから付けられている。浅田次郎の文章力はどの本を読んでも感心させられる。プロの文章力を褒めるのもおこがましいことだが、語り口とマッチしていてつい引き込まれてしまう。今回の中では最後の「冬の旅」が良かった。学生時代、学期末か何かの試験を終えて、無目的に汽車の旅に出る。上野を出て赤羽でどう見ても若かりし時の自分の両親が乗り込んでくる。自分はきっとこのカップルの子供らしい。車掌が検札に来る。自分が入場券で入って越後湯沢まで行きたいという。ブツブツ車掌に文句を言われてしかし、悪いことをしている訳でもないので変に咎めるという訳ではないが、赤羽から乗車した客も同じように赤羽の入場券で越後湯沢まで行きたいと言っている。車掌は自分の方を振り返り、首をかしげながらこの偶然を受け止め兼ね、しかししぶしぶという感じで乗り越しの切符を発行している。越後湯沢に到着するが赤羽から乗った2人は降りようとしない。それで自分も降りない。どこへ行くのか見届けずにはいられない。これは父が母を結婚式の席上から拉致してきた時の情景に行き合わせたのだ。彼らはそれからどうしたのだろう。捜索の手を逃れてどこかに潜伏し、何かの機会に父は商売で成功し、世に出られるようになったと聞いている。これから彼らはどこかに身を潜ませるのだ。そして自分が生まれる・・・・「ポッポや」の情景が思い浮かぶ。この作家は幽霊も好きだ。タイムスリップなどどうということはない。お得意の世界なのかもしれないが上手い。
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