2015年1月15日木曜日

東野圭吾:鳥人計画

丁度、ジャンプ競技もたけなわになってくる昨年末、図書館で見つけた本。レジェンド葛西紀明は43歳ぐらいにしてなお、世界のトップジャンパーを張っている。この本の主人公は30数歳にして己の限界を感じ、同じ会社に入ってきた有望な新人のジャンプに魅せられる。その新人は天衣無縫、世間を甘く見ているというか軽い言動で何という若造!と思わせるが、そのジャンプが凄い。その才能を何とか自分もモノにしたいとそれこそ工夫に工夫を重ねて頑張るがどうしても追いつけない。そして自分の夢を「この新人を世界一のジャンパーに育て上げる」に切り替える。その主人公が事もあろうにその有望新人を殺害する。それも周到な準備をしてアリバイを作りながら毒入りカプセルを使って。なぜ?この物語は最初からこのコーチが犯人であることを明かした上で、その手口(トリック)と何故、殺そうなどという行為に及ばなければならなかったのかを刑事の調査や同じ現役ジャンパーの心理や科学的なトレーニングで世界を目指す大手企業のスキー部の動きを絡めて解き明かしていくという変わった手法を試みた推理小説だった。一見、目論み通りに行ったと思った殺人計画だったが、計画したのとは少しのズレがある。犯人も不思議に思う。そして密告(「あなたが犯人でしょう。自首しなさい」)の手紙が来る。警察にも届く。何かがおかしい。大詰めになって一気に謎の紐が解けていく。スキーのジャンプ競技という人が鳥のように飛ぶ競技の難しさ、技術進歩をしっかり解説しながらその競技の中で揉まれていく人たち、おぼれていく人たち。色んな人間群像も描かれていて面白かった。

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