2016年5月23日月曜日

澤田瞳子:「孤鷹の天」

澤田瞳子の著書への挑戦、第2冊目。天平時代のお話。律令制政治がようやく軌道に乗り始めた時期ではあるが、他方では国家事業として東大寺や薬師寺といった大きな寺院や仏像の建造が相次ぎ、日本の歴史上では最初の仏教文化の黄金時代を築いた時でもある。そこに孝謙天皇がその娘婿である淳仁天皇を嫌ってクーデターを起こし、2度目の天皇(称徳天皇)として返り咲く。この覇権争いが舞台だ。これは視点を変えると従来型の仏教教義に基ずく政治体制と律令制による儒教政治との争いともいえ、僧道鏡を信じた旧体制の巻き返しでもあった。それに巻き込まれていく儒教を学んで官僚になっていく有為な若者たちの運命を狂わせていく。いつの時代でも純粋な若者は学んだ学問に忠実でありたいと願い行動し、そして滅びていく。この若者群像を描いた歴史小説だった。日本では女性が天皇位についたのは8代あるのだそうですが、その内3代が天平時代だったというのも不思議なことだ。

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