2021年6月28日月曜日

原田マハ:「異邦人」(いりびと)

 4冊目は絵画の愛好家(コレクター)や画商などの美術界の周辺の世界が舞台だった。時は丁度2011年3.11の直後に設定し、結婚間もなく妊娠した妻が放射能の危険を感じて京都に避難したところから始まる。祖父が有名なコレクターで美意識の高くて裕福な家庭で何不自由なく成長し、今はその収蔵品を収めた美術館の副館長を務める。結婚相手は銀座の老舗の画商で画廊経営者の専務という絵にかいたようなセレブの夫婦。この夫婦が京都の有名な日本画家と知り合い、そこの娘の類い稀な鋭い感性を感じさせる日本画に接する。3.11を機に拡がる環境汚染への不安、経済不安が経営難をもたらし、一方これまでの恵まれた環境から優れた絵画にはお金を惜しまない性癖が益々強くなり次第に歯車が狂いだす。京都の移り変わる四季に合わせて物語が進行する。後半は出生の秘密や日本絵画画壇での争いや何やかや、盛り込みすぎる感が強い中で終わる。

0 件のコメント:

コメントを投稿

吉田修一:「永遠(とは)と横道世之介」

 横道世之介シリーズの完結編であることはタイトルから想像がつく。これは新聞の連載で読んだものである。と言っても細切れで読んだわけではない。というのは私は新聞のデジタル版の購読者なので、こういう連載小説はHPのアーカイブスのようなところに全部保管されているのでまとめ読みが可能なので...