2022年5月21日土曜日

高田郁:「あきない世傳金と銀」(1)~(5)

 武庫群津門村で塾を営んでいた父が急死し、一家は大黒柱と共に住まいもなくした。塾を貸していた庄屋の彦太夫の好意で母と妹を下女として住み込みを許されたが、姉の幸は大坂の呉服屋「五鈴屋」へ女衆として奉公に出された。そのとき9歳。大好きだった兄、一家の大黒柱の父を失くして、しかしその分強くなった幸。江戸時代の大坂での女性の地位は腹が立つほど低くかった。『五鈴屋』のお家さん富久さんに認められ、放蕩息子で嫁の来てのない4代目の後添えとして嫁ぎ、ご寮さんとなるが問題ありの4代目はもとより、商売のためなら冷酷無情な5代目も問題あり、やっと6代目の3男、智蔵さんと一緒になり、智蔵の理解のもとで商売に励む。知識を蓄え、知恵を絞って成果を上げるのが楽しくて仕方のない幸。今時のビジネス入門書のようにマーケッティングのことなど現役世代にもためになることが全編に散りばめられて読んでいて飽きない。4代目で倒産寸前の五鈴屋を安定して大きく育て上げ、智蔵と共に江戸店を出せそうなところまで持ってきた、そこで6代目の急死、波乱万丈の幸はそれでも着々と江戸店開設の準備を進める。いよいよ幸は江戸に向かう。全12巻の文庫本なかなか進まない。取り敢えず5巻までで1回、感想をアップすることにした。物事が実るには「縁と月日」が必要と説く前の番頭、治兵衛が経営指南役である。

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