2022年6月5日日曜日

高田郁’「あきない世傳金と銀」(9~10) 

 前田加賀藩からの飛び込みの呉服注文を受けて、五鈴屋は苦境に陥った。なぜか?元々、呉服組合があって、色んな決め事があったが大阪に比べると緩やかなものだったが、こと武家対象となると訳が違った。半ごとの定紋が定められ、取扱業者も特定化されていて、他の業者は手を出してはいけない、規定になっていたのでそれに触れて組合を除名されてしまい、呉服を取り扱うことができなくなった。呉服は絹物、太物は木綿もの、売値では同じ1反でも売値は1/4ほどになってしまい、商売にならない。五鈴屋江戸本店は大ピンチに。その上、幸の妹の結が呉服の新柄の小紋染めの図案を持ち出して家を出て、こともあろうに金貸しの音羽屋の元に身を寄せ、音羽屋の息のかかった呉服屋、日本橋音羽屋から売り出し大当たりをとる。順風満帆で発展してきた4年間が暗転し、踏んだり蹴ったりの逆境に陥った五鈴屋の面々は苦悩し、知恵を絞る。「衰える兆しは最も盛んな時に生まれ、新たな星雲の芽生えは何もかも失った時、すでにある」という菜根譚の中の1フレーズを店に立ち寄った漢学者に教えられ、3年の月日を数えて、藍染めの浴衣にたどり着く。服飾の歴史を見るような又、24節季の季節感を味わえるような日本の四季の移ろいの美しさを味わえる波乱万丈の江戸中期商家の盛衰の物語。あと残すは2巻かな?どこまで続くのかは分からない。

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