2020年6月29日月曜日

ジョン・オカダ:「NO-NO BOY」

6月に入って図書館再開となってすぐに届いた3冊のうちの最後の1冊。
奇しくもこの本を手に取る直前にアメリカで一人の黒人が警官に絞殺されました。BLM運動(Black lives matter)が全世界に広がり始めていました。なぜ奇しくもかといえば、この本はシアトルに生まれ育ち、第2次大戦下、徴兵拒否で2年の刑を受け帰ってきた日系2世の若者の心の葛藤の日々を描いたものだったからだ。戦争に行った人も拒否した人もその心の葛藤は大変なものだったと思う。そして服役を終えて戻ってきたシアトルの社会には日系だけでなく、中国系、イタリア系、無論アフリカ系の黒人たちがひしめき合い、互いに互いの差別社会の中で喘いでいるのを見る。自分とは何者なのか?どこへ向かって生きていったらいいのか?」という誰もが一度は考える普遍的なテーマを掘り下げている(あとがきから引用)パールハーバー後のアメリカ社会で起こった日系人排斥政策で約12万人の日系人が収容所に収監され、悲惨な生活を余儀なくされた。このことは前にも
で触れたところだ。今度の本の主人公はこれも奇しくも名前はイチロー、シアトルのイチローを思い起こさせる偶然です。イチローは日系人社会の人々、友人たちや求人広告で面談したポートランドの建築会社社長の良心的で健全なアメリカ人キャリックさんなどとの出会いを通して混沌としながらも少しずつ将来への希望を感じ取る。でもその希望とは一体どんなものなのか表す言葉はまだ分からない・・・。ただ、読み手にはこのテーマは正に、人種や国籍や人の肌の色で区別するのでなく、もっと普遍的なところで分かり合える何かがあるのではないかと訴えかけてくるところにあるようです。

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