2021年4月30日金曜日

夏川草介:「神様のカルテ0」

 先頃読んだ「始まりの木」の読みやすさと広がる世界の爽やかさに惹かれて、彼のデビュー作「神様のカルテ」シリーズを暫く読み進めることにした。その第1弾が「神様のカルテ0」だ。ゼロとあるので最初この本を書いたのだろうと狙いを定めて予約しておいた本が届いた。

舞台は松本、品の大学医学部院生の「有明寮」が舞台だ。新藤達也、栗原一止、砂山次郎、草木まどか、如月千夏、楠田重正といったメンバーの青春群像劇。高知出身で愛読書が夏目漱石と分かりやすい。6年の既定の卒業を目前に控え試験で忙しい。卒業試験のほかに医者になるための必須の関門である国家試験もある。そしてその後の進路を決める謂わば就職試験に相当するものが控えているのでみんなそれぞれナーバス。地元の中核病院、本庄病院を狙っているのは栗原一止。新藤達也が主人公かと思ったら栗原一止が主人公だった。そして研修医として本庄病院で試練を受け続ける1年目。良き指導医に恵まれて一人の医者へと脱皮していく様子が生き生きと描かれていく。最終章でいきなり北アルプスの冬山登山が出てきて些か唐突、ここに登場するうら若き女流写真家、片島榛名。栗原一止のフィアンセらしい。大学を卒業して数年が経ったようだ。

続いて届くであろう「神様のカルテ」、「神様のカルテ2」ではどんな展開が描かれているのだろう?連休中の楽しみにしよう。

2021年4月27日火曜日

ピンクムーン

 4月の満月は欧米ではピンクムーンという。名前の由来は4月に開花するフロックスという花のピンク色に因んだ命名という。


ベランダから眺めるピンクムーンはいつもの満月と変わりないようにしか見えない。それはそうだよね。


日本ではそろそろ「おぼろ月夜」といわれる時期だ。朧では写真にならない。月と取り合わせる何かが欲しい。


2021年4月19日月曜日

池井戸潤:「アキラとあきら」

 父の鉄工所が倒産して夜逃げに走った山崎一家の息子、瑛と、順風満帆の祖父が立ち上げ親と叔父2人の3人で築いた郵船会社の御曹司、階堂彬は学校を卒業すると奇しくも同じ銀行に同期入社する。お馴染みの池井戸潤の世界は現実社会を下敷きにして波乱万丈、運命に翻弄されて目まぐるしい。

2021年4月12日月曜日

夏川草介:「始まりの木」

 タリスカーというスコッチを知っているかと問われ、「知らない」と返事したことははっきり記憶していた。

図書館で予約の図書を受け取りに行った時、メール連絡では宮本輝の作品1冊、だけだったのに係の人が持ってきてくれた本は2冊、その内の1冊がこの「始まりの木」だったが、私はそんな本は借りた覚えがないというと今日届いたのでまだ連絡メ-ルは届いていなかったかもしれないという。狐につままれたように借り受けた本は宮本輝の「灯台からの響き」に優先権を取られて待ち受けモードへ。そして宮本輝が終わって「始まりの木」へ。ネットで調べればヒントは得られたかもしれないが、読めば判るという勢いでページをめくった。5章に分かれて変わり者の民俗学の准教授古谷神寺郎に同行する修士1年の藤崎千佳が主人公兼舞台回しで国内の5か所の巨木の名勝地を巡りながら成長していく。巨木が日本の土着信仰の原点の一つだという認識はあったので十分付いていける話だった。その最終章でいきなり「タリスカー」が登場したのだ。思いがけなかったがその時、そのスコッチの名前を尋ねたLINEの会話がよみがえってきた。ああ、あの時にそのスコッチが出てきた小説の名前を聞いて、その本を予約したということを。すっきりしたが本は残すところ20数ページ、だがすっきりした気分でフィナーレを迎えることができた。

2021年4月6日火曜日

相次ぐ訃報

 昨日の田中邦衛(88歳)、橋田寿賀子(95歳)。2人共にかなりの高齢だが自分の中の昭和を象徴する人たちがまた人生の舞台を降りた。昭和を象徴するような2人だった。田中邦衛は言うまでもなく北海道は富良野を舞台にした倉本聰監督脚本の「北の国から」の父親役。昭和を代表する役者といえば色々いるが、自分にとって印象深い順で挙げれば「駅」や「居酒屋兆治」の高倉健、「男たちの旅路」の鶴田浩二、「寅さんシリーズ」の渥美清たちだろうか?方や橋田寿賀子といえば何といっても「おしん」だろう。寂しくなるがこれが時の流れというものなのだろう。

2021年4月2日金曜日

原発についての中川秀直の感慨

 今日は毎日新聞に掲載された特集から主要部分をコピーして、以下に紹介する。

「官房長官などの要職を歴任した中川秀直・元自民党幹事長(77)が、原発廃止とエネルギー政策の転換を求めて活動している。安倍晋三前首相らの出身派閥、清和政策研究会(清和会、現在の細田派)の代表世話人を務めたこともある政治家が、政界引退後の今、「原発再稼働は犯罪的。亡国の政策だ」とまで言い切るのはなぜなのか。東京都内の事務所を訪ねて疑問をぶつけた。 「全部ウソだったと分かったからですよ。原発の『安全』『安価』『安定』、すべて虚構でした」

 中川氏の答えは明快だった。喜寿とは思えぬエネルギッシュな表情で、180度「転向」した理由を切々と説明し始めた。

 「信じていたんです。資源のない日本で、温暖化を防ぎながら、しかも安いエネルギーは原子力しかないと。日本の原発は『多重防護』で守られていて、原子炉格納容器は絶対に壊れないと専門家から説明されていた。自分でも勉強して、そう確信していました」

 ところが2011年3月11日、東京電力福島第1原発は東日本大震災の激しい揺れと大津波に直撃され、3基がメルトダウン(炉心溶融)。東電が「絶対に壊れない」と主張してきた格納容器の底が抜けて核燃料が溶け落ち、建屋が爆発して大量の放射性物質が大気中にばらまかれたのだ。あの日、中川氏は目が覚めたという。 「政府も東電も我々も皆、間違っていた。政治、行政、司法や産業界、学界、労働界、マスコミまでが安全神話を振りまき、とりつかれてきた。なのに事故は『想定外』だったとして、誰も責任を取っていません」 事故から10年たっても、東電はいまだに推定880トンもの溶融燃料(核燃料デブリ)を手つかずのまま取り出せていない。これは米スリーマイル島原発事故の7倍近い量だ。仮に取り出せたとしても、どこで保管し、どこで処分するかは今も決まっていない。一方で高濃度の汚染水が発生し続け、敷地内の土壌自体も汚染が止まらない。この汚染土も外部に運び出しようがない。 深刻なのは、事故後に16万人が故郷を追われ、そのうち数万人が今も避難生活を余儀なくされていることだ。「10年前の今ごろは首都圏を含む5000万人が避難を強いられる一歩手前だった。原発事故が起きると、国がなくなる恐れがある。亡国の道具と言っていい。なのに今だけ、金だけ、自分だけのために原発の再稼働を進めるのは亡国の政策であり、犯罪的です」

 語り口はソフトだが、目が怒っている。愛する郷土と国土を守り、国民の生命財産を守ることを最優先に考える保守政治家だからこそ、原発に固執する勢力を許せないようだ。「既にたまっている放射性廃棄物だけでも広島・長崎の原爆数百万発分に相当する量です。中間貯蔵も最終処分もできないまま増えてきた。今や原発は日本最大の危険物です」

吉田修一:「永遠(とは)と横道世之介」

 横道世之介シリーズの完結編であることはタイトルから想像がつく。これは新聞の連載で読んだものである。と言っても細切れで読んだわけではない。というのは私は新聞のデジタル版の購読者なので、こういう連載小説はHPのアーカイブスのようなところに全部保管されているのでまとめ読みが可能なので...