新コロナウィルスと戦う信州の小規模ではあるが、地域で唯一新コロナウィルス患者を受け入れている病院の医師たちの戦いの日々を描いたドキュメンタリータッチのお話。
敷島医師はこれまでの神様のカルテシリーズで登場してきた主人公によく似た読書好きで家庭的にも良きパパで常に冷静な良識ある医師だ。専門は消化器内科で感染症とは関係がなかった。物語は2020年2月から2021年2月までの第3波がようやく終焉しつつある頃までだが、物語の中心はその第3波、2021年1月から1か月ほどの期間だ。その主人公が彼の元々の患者である山村さんと院外の敷地で出会い、数分の立ち話をする。母親が認知症で介護をしながら仕事をしている。その母親が偶々2~3日利用したディサービスでクラスターが発生し、認知症の母親も発熱し、PCR検査陽性となり、入院したと朝のカンファで報告があった。敷島もいわゆる濃厚接触者ということになる。そう分かった途端に心に浮かぶ死の恐怖、家族にうつしてはいけないという使命感、家に帰っても車で寝泊まりする日々の孤独感。幸い、陰性が続いて職場への復帰がなるのだが、そこでも同僚からのそれとない疎外感を描いたところがハイライトだった。