2021年8月28日土曜日

朝ドラと鈴木京香

 今回の朝ドラ「お帰り、モネ」は久し振りに面白い。タイトルの音楽には中々なじめないが、3.11東日本大震災を経験して10年という節目を意識したのだろうか、この過ぎ去った10年が決して過ぎ去っていないで人々の胸に突き刺さったままの人たち、その時を偶然、仙台に行っていたために難を逃れたことが負い目になっている主人公の百音。皆、あの時を胸に畳んで生きている姿を気象予報士に挑戦していく百音の心の動きを通して描いている。この百音と妹の未来との心の複雑な絡み合いもあって目が離せない。この姉妹の母親役が鈴木京香だ。最近、露出度が高いのだろうか?いい母親役を演じている。先日観たテレビドラマ、「ライオンのおやつ」でも離島でホスピスを営む女主人を演じて慈愛に満ちた振る舞いを見せていた。昭和43年、宮城生まれだとか。いい年の取り方をしてきたのだろう、と思う。

2021年8月19日木曜日

原田マハ:「ロマンシェ」

 主人公美智之輔は心は女の子の美大生いわゆる性同一性障害で自分は世界の真ん中を歩いていけない人間だという想いを持っている。だが一方で同級の颯爽とした高瀬君にあこがれているのだが言い出せず悶々としている。頭の中での妄想を軽妙なタッチで描写しているのでじめじめしない、嫌味がない読み物に仕上がっている。美大の卒業制作が認められてパリ留学。パリの街角の描写が懐かしい。漫画チックな読み物としてはこんな仕上げもできますよと原田マハの才知を見せてくれた。登場人物が皆いい人たちでそれも読んでいて楽しい。美智之輔はパリでリトグラフの世界に魅せられ、また女性作家ハルさんというよき理解者を得て最後はしっかり締めてくれてハッピーエンド。

2021年8月17日火曜日

映画:「キネマの神様」

 最近お気に入りの原田マハの原作。だが原作はまだ読んでいない。主役を志村けんがやることになっていたのだが、新コロナで急死したため、急遽沢田研二が代役を務めることになったという話は新聞で読んで知っていた。どんなお話しだろう?と観に出掛けた。最近はいつ映画館に行っても観客は10人に満たないことがほとんどで今回も例外ではなかった。これで採算が取れるとも思えないが映画は家では味わえない空間だと感じていてこれが家から歩いて10分の所にあるというのは本当に有難いことだ。山田洋二監督で今時に合わせてアレンジされているようだ。劇中に主人公(酒とギャンブル好きのダメおやじ)が「東村山3丁目」をカラオケで歌うシーンがあってシナリオは志村けんを当てにして書かれたことが分かる。やはり原作を読まなくては・・・。ニューシネマパラダイスには及ばないかな?

2021年8月1日日曜日

原田マハ:「あなたは誰かの大切な人」

 タイトルのように自分の存在が誰かに大切だと実感させられるような人生であると良いですね。

そんな寓話を6つ、見せてもらいました。6つのお話し、共に40歳代でお仕事を持って自活している独身女性で、今その瞬間、立ち止まって人生を俯瞰している。ほぼ肯定的であることが救いになっている。最後の一編はフィーリングが合いともに独立建築事務所の共同運営者でもあった盟友の青柳君が愛して止まなかったメキシコシティにある「ルイス・スアレス邸」を訪れるもの。彼は緑内障で年毎に視力が落ちていきいつ失明してもおかしくない、私は乳がんで片方を全摘しながら建築事務所を切り回している。ぎりぎりの人生をお互いを大切に思いながら生きていく姿が切なく美しい。

吉田修一:「永遠(とは)と横道世之介」

 横道世之介シリーズの完結編であることはタイトルから想像がつく。これは新聞の連載で読んだものである。と言っても細切れで読んだわけではない。というのは私は新聞のデジタル版の購読者なので、こういう連載小説はHPのアーカイブスのようなところに全部保管されているのでまとめ読みが可能なので...