2021年3月30日火曜日

宮本輝:「灯台からの響き」

 難しい哲学書にようやく向き合った牧野康平の顔に1枚のはがきが落ちてきた。30年前、妻の蘭子に届いた1枚のはがき。差出人は見ず知らずの人からだという不思議な話だが、対して気に留めなかった。妻が「私ん知らない人です。と返事の手紙を書き自分が投函したのだから間違いもない。その妻が2年前に突然亡くなった。失意から立ち直ることもできなかった板橋という古い商店街の中華蕎麦屋の主人公、牧野康平の再起の物語でもある。宮本輝らしい物語の展開、ラストは素晴らしい。

2021年3月18日木曜日

東野圭吾:「ナミヤ雑貨店の奇蹟」

 東野圭吾のこの路線は好みだ。今回の本書は時空を超え、そして繋ぐ不思議な雑貨店が舞台だ。悪ガキ3人が隠れ家に選んだ空き家らしい店が「ナミヤ雑貨店」だ。同じ地域にある養護児童園「玉泉園」の卒業生と妙に縁がある。5つの話でその不思議なつながりが明らかになっていく。店の表のシャッターに付けられている投函ポストと店の裏側にある牛乳配達の受け取り箱が現座と過去をつなぐ。夜中に投函された相談事への回答が翌朝の牛乳受け取り箱に入れられている。第5章で玉泉園と雑貨屋のつながりの謎が解ける。またその終わり方がしゃれている。好みの好みたる由縁。読書の楽しみのようなもの。2012年中央公論文芸賞受賞作。

2021年3月12日金曜日

3.11から10年:「原発事故は人類の悲劇、まだ終わってない」

この日、この話題をスルーする訳にはいかない。10年前のこの日、日本橋茅場町で仕事をしていた。以下は震源地から約375㎞離れた東京都心での被災記録だ。

その仕事場は交差点の一角に建つ鉛筆のような細長いビルの8階にあった。揺れは今ははっきりといえるがいわゆる長周期振動で最初は大した揺れではなかったが段々と振幅が大きくなり、その鉛筆ビルは交差点に倒れるのではないかと一瞬想像した。そしてしばらくすると揺れが収まるのではないかと思ったが、そこから1段ギアを上げて猛烈な揺れが再来した。その時これはひょっとすると関東大震災に次ぐ2度目の首都直下型地震ではないかという想像が頭をよぎった。揺れに耐えて自分と同じぐらいの高さのファイル棚が倒れないように左手を添えて壁との間で自分を支えている間、家族のことまでは気が回らなかった。数分の後揺れがいったん収まってから窓際から交差点を見下ろした。大勢の人が立ち尽くして自身の収まったのを確認している様子が見えた。オフィスでは大きな金庫が自重でフリーアクセスの床を突き破って大きく傾きファイル棚からはファイルが雪崩落ち足の踏み場のない状況になっていた。それからテレビをつけて情報収集に入った。この時点で息子たちに電話したところ皆無事を確認出来て一安心した。その後は時間の経過と共にみんなも知っている津波の映像へと移っていったのでした。16時過ぎにこれは家には帰れそうもないと近所のビジネスホテルに予約に行ったが時すでに遅しで満室。事務所に泊まるしかないかと観念した。23時を過ぎると地下鉄が動き出したとのことで家のことも心配なので帰ることにした。地下鉄で新宿に出るのに90分掛かった。あとで分かったことだが新宿駅が大混雑で新宿に電車を入れないようにコントロールしていたらしい。 京王線の電車は各駅停車で随時発車していたが結局、北野駅に着いたのは午前4時過ぎだった。タクシー乗り場は乗車待ちの人で一杯だったので歩いて帰宅したのは12日午前5時頃だった。幸い、家の中は何一つ落ちたり倒れたりしたものはなかった。

しかし本当の災害はそれからの4日の間に津波をかぶって全停電になった福島第1原発3つの原子炉が水素爆発を起こしたことだ。地震は天災に近いが原発事故は人災(人間の浅知恵が引き起こした災害)だった。アメリカでは日本の関東を含む北半分が汚染される大事故になるとの判断が下され、大使館に在留アメリカ人の避難勧告が出されたらしい。知らぬは日本人だけだったのだ。そして現在のように主として福島県だけの局地的な放射線汚染で収まったのは本当に奇跡だったようだ。

今まだ、原子力発電に頼らずして脱炭素社会は実現できないと原発に依存し続ける人たちに限りない疑問符を投げ掛けたい。

2021年3月4日木曜日

iPADミニ無事帰還

 電池交換をお願いしたiPADミニは1泊の外泊で新品に近いらしい電池に交換されて無事帰還した。気持ちよく動く。これでしばらくは快適だろう。不在の昨夜、初めて買った古いiPAD3を出してきて動かしてみた。OSはver.9で止まったままで新しいアプリはほとんどインストールできなかった。メーラも不完全な動きしかしない。Googleがインストールできないのが致命的だ。Gメールもウェブからもアクセスできない。調べてみると2012年3月7日発売とあった。あと3日で9年目になる。技術進歩の早い世界ではこれも当然のことなのだろう。iPADminiに比べるとずいぶん重いが画面は10インチ以上できれいだし何か使い道はないだろうか?

2021年3月3日水曜日

タブレット(iPad ミニ)バッテリー寿命尽きる

 日々、家の中でのちょっとした調べ物など雑用を一手に引き受けてくれていたiPad ミニが充電100%にしてもアプリを起動すると途端にシャットダウンする。充電しっぱなしでなら使えるみたいな状態になってしまった。中古で購入して5年、やむを得ない。
日常の利用にはどんなことがあるだろうか?
・デジタル新聞の購読
・メールの送受信
・ちょっとした調べ物(検索)

これらはみんなスマホででもできるし、パソコンを開けば勿論何でもできるのだが思い立った時すぐにできる利便性と画面の大きさは安心して操作出来て頼りにしている。買い替えかそれとも辞めてしまうか、悩みながらバッテリー交換の可能性を調べてみるとアップルの営業拠点以外でも修理屋さんがあることが分かり今日は実機持参でお願いに行ってきた。第4世代の場合は8,800円とのこと、自分でやれば材料代込みで4000円ほどでできるようでそのやり方もYoutubeに色々アップされていたがそれを見てみると器用ではない自分には無理とあきらめて依頼してきた。1~2日掛かるようだが問題ない。

吉田修一:「永遠(とは)と横道世之介」

 横道世之介シリーズの完結編であることはタイトルから想像がつく。これは新聞の連載で読んだものである。と言っても細切れで読んだわけではない。というのは私は新聞のデジタル版の購読者なので、こういう連載小説はHPのアーカイブスのようなところに全部保管されているのでまとめ読みが可能なので...