「終わった人」というドラマ風の本の連作ものにこの「すぐ死ぬんだから」があると知り、図書館から借りて読んでみた。「終わった人」がタイトルから連想されるように定年を迎え、祖語の日々をどう過ごそうかと苦闘するサラリーマンを描いているのに対し、こちらはそれから10_20年を経た年代の、謂わば内館さんと同年代の幸せに過ごしてきた夫婦が実は驚きの欺瞞の中にあったことを知り、天地がひっくり返るような驚きを体験し、乗り越えていくお話しだった。80歳代を前にして、絶対に年より臭く見られたくない妻と俺は自然体の生き方でいいよ、という折り紙が趣味の夫。その夫はいつも妻を「最高の人」と褒め上げていた。夫婦間では勿論、人前でもそう言って憚らない、そんな夫婦だった。その夫がある日、突然亡くなってしまう。どうやら数週間前に転倒して頭を打ったことがあったらしくてそこからの出血が原因だったが遺品の中から、本人が出入りするはずのない意外な場所の病院の診察券が出てくる、息子に手渡してあった重要書類箱から遺言書が出てきて相続に関する意外な内容から物語は急展開する。その意外な顛末は・・・・・。タイトルから想像するのとは一寸違って、やはり内館流のホームドラマ仕立てではあったが面白く読んだ。
2022年10月13日木曜日
2022年10月11日火曜日
水上勉:「土を喰う日々」―わが精進十二ヵ月ー
何かで気になって図書館から借りたがその切っ掛けが何であったのか、思い返しても分からない。懐かしい作家の本だ。どんな内容かとページを開くと何と料理レシピの本ではないか! この人は福井県若狭の生まれで9歳から京都で小僧として禅寺に入っていた。何を得したかと問われれば精進料理を覚えたことだろう、と書き出している。畑で育てた季節の野菜を料理にして心のこもった惣菜をつくる。そうした昔の体験をもとに、1年12ヵ月にわたって様々な料理を自分で工夫して作って見せる貴重な料理本だった。と同時に土の匂いを忘れた日本人の食生活を嘆き、修業時代に躾けられたこと、教わったこと、師匠のことなどを語り継ぐ素晴らしいエッセイになっていた。文庫本でありながら、毎月のカットなども水上勉氏が直筆で描いたものらしいが気が利いていてお洒落だった。何より作家が楽しんで料理を語り、作り、書いている様子がありありと伝わってくる。
1月:等持院という禅寺で9歳から中学生時代を過ごし、かっては東福寺の管長を引退された尾関本考老師のお世話係(隠侍というらしい)をしていて掃除洗濯、食事のお世話をしていたらしい。老師は酒好きで、になると必ず酒、来客も多く、老師から直接料理の注文が出てそれを作っていたという。老師は又、日中庭の畑で作業を1時間ほどはやるのでいろんな野菜が植えてあって、隠侍である水上少年はそれらの野菜を見繕って料理を作らされていたという。畑と相談して料理を絞り出す、それが精進料理だと思っていた。土を喰らうというのはその時の実感だという。クワイを焼く、丸ごと気長に役と土が育てた甘い香りが漂うという。
2月:山椒の木の枝から作ったすりこぎの話から始まる。水上氏の手作りのすりこぎの写真。軽井沢で過ごしていた氏は敷地内で見付けた山椒の木から表面を磨いて作ったらしい。1~2月の軽井沢は畑には何もない。貯蔵庫に取り置いた野菜類がすべて。 こんにゃくの辛子田楽。フキノトウの串焼きに甘い味噌を添える。すりこ木から微かに削り取られる山椒の香りが移るような気がしてそこが何とも言えず料理の風味を増すような気がすると書いている。
3月:まだ畑には何もないこんな時来たお客に何を出したらよいか、考える。家にあるもの、例えば高野豆腐、湯葉、豆の煮ものなど。材料をにらみながら、材料になり切って、ひと工夫冒険してみる愉しみは面白い、と説いている。
4月:執筆に使っている軽井沢も山菜の宝庫と化する。ヨメナ、水芹、タラの芽、アカシアの葉、わらび、みょうがだけ、やまうど、アケビのつる、ヨモギ、こごみ、それらを小川を漁り、斜面を這い上り収穫してくるのだという。食べ方もシンプルで酒のおつまみにぴったりのものばかりが出てくる。
5月:筍の季節。わかめとの炊き合わせが一番と力説する。筍は竹林を連想させ、若狭の生家のこと、京都のお寺の竹林のことへと話は飛ぶ。東京の家に竹を植えて、自分はいくら生えても苦にはならないが、奥様はやたらと繁茂する竹、隣家に侵入するのを恐れ、これで衝突する、まさか竹林ごときで離婚する訳にもいかぬと小さく収めて知人たちに分け与えたりした話は面白い。
6月:梅、梅干しの話で完結。梅干しは50年経っても60年経っても十分梅干しとして味わえる。新潟の読者のお婆さんから「うちの土蔵には源義経が漬けたという梅干しがある。あなたになら1粒、食べさせてあげる」という手紙をもらった話が載っている。
7月:茄子。夏大根、茗荷、山椒の実を取り上げている。山椒の身にまつわる祖母の思い出話などは興味深い。料理には6つの味があるという。甘、辛、酸、苦、渋、に加え、後味(食べた後又食べたくなる後味)だという説を紹介してくれている。(日本料理の奥義、中村幸平著)
8月:奴豆腐。禅寺では3日に1回は豆腐料理だという。精進ばかりの料理に栄養を仕込むのが豆腐の役割で禅僧の長命の秘訣だという。ごま豆腐、胡桃豆腐、落花生豆腐もあるという冬瓜のあんかけも取り上げている。
9月:松茸、その他キノコ
10月:果実酒。地梨子、マタタビ、すぐり、見たこともないのであまりイメージが湧かない。畑ものでは秋ナス、唐辛子、その他野菜類の天ぷら・・・野菜の交響曲と表現している。
11月:栗の話だ。あとは冬に備えた献立。こんにゃくの山椒焼き、大根の田楽、馬鈴薯の田楽
12月:来年に備え、集めて山にしてあった落ち葉を日を選んで焚く。土に戻してやる作業が待っている。この時、渋柿を銀紙に包んで埋めておくとこれに大麦の粉を混ぜこねるとチョコレートのような美味なのようなものが出来上がるという。さすがにこれは一度食べてみたいと思わせるものだった。
2022年9月13日火曜日
鎌倉だより:白露巳日の「大祭」(今年は9月13日)
2022年9月7日水曜日
鎌倉だより:海蔵寺(8月31日)
夏の暑さも一段落したと思ったら、またもや猛暑が帰ってきた。歩きも考えたが暑さに無駄に抵抗しても仕方がないので車で行ってきた。予てから予定していた古刹、海蔵寺という寺の名前が何となく魅力的である。鎌倉幕府滅亡時に焼失して、後に1394年、足利氏満の命で足利氏定の再建と伝えられる建長寺派の禅寺だそうだ。「底抜けの井」とか「十六の井」とかがある水の寺だ。鎌倉らしい扇ガ谷の一番奥に静かに佇んでいた。
2022年8月11日木曜日
高田郁:「みをつくし料理帖(特別編)花だより
1822年から3年にかけてのその後の登場人物たちのその後である。
女料理人澪の去ったその後の「つる屋」の話。4年の月日を経て大坂に戻って店を開いた澪のところに様子を見に行きたくて仕方がない。
澪を愛しながら料理人の道に進むため、自ら身を引いた御膳奉行の小野寺数馬、格上の大目付から妻由緒を迎え、穏やかなしかし不思議な夫婦として平穏無事?相変わらず料理下手の叔母早帆から夫にはかって想い人がいたと明かされて気になって仕方がない
晴れて大門を出て、一般人に戻った花魁あさひ大夫は本名の野江に戻って、大阪に戻り、昔、親が開いたような舶来物や豪奢な簪などを商っている。大坂では江戸と違って女名字による店主は認められていないので3年の期間の間に身の上を決めなければならない決断に迫られている。
町医師、源斎と晴れて夫婦となり、今は大坂で「つる屋」をイメージしたような小さな店を長屋の一角に構え、それなりに評価を得て固定客も増えつつある。ここで西の方から今でいうコレラが発生し、当時の医術では到底かなわず、治療法も予防法もわからず、源斎は何とかと踏ん張るも打つ手もなく憔悴しきり、医師としてのプライドも失い、立ち直ることができない。
4つの話のその後談であった。これで「みをつくし」は完結を迎えた。楽しませてもらった。
2022年8月3日水曜日
高田郁:「みをつくし料理帖(7)~(10)
第7巻「夏天の虹」
想いびとである小松原と添う道か、料理人として生きる道か・・・・・・澪は、決して交わることのない道の上で悩み苦しむ。「つる家」で料理を旨そうに頬張るお客や、料理をつくり、供する自身の姿を思い浮かべる澪。天空に浮かぶ心星を見つめる澪の心には、決して譲れない辿り着きたい道が、はっきりと見えていた。そして澪は、自身の揺るがない決意を小松原に伝える。
第8巻「残月」
吉原の大火、「つる屋」の助っ人料理人・又次の死。辛く悲しかった時は過ぎ、吉原の大火の折、又次に命を助けられた摂津屋が「つる屋」を訪れた。あさひ太夫と澪の関係、そして又次が今際の際に遺した言葉の真意を知りたいという。澪の幼馴染、あさひ太夫こと野江、その他、若旦那・左兵衛との再会は叶うのか? 料理屋「登龍楼」に呼びだされた澪の新たなる試練とは……。雲外蒼天を胸に、
・迷いに迷った時道が枝分かれして、、どうすれば良いか?そんな時、自分なら心星を探す、との医師・源斎の言葉を幾度も噛み締める。一流料亭の「一柳」主人柳吾からの誘いも同じように心星に照らしてみれば自分の進みたい道とは違う。
第9巻「美雪晴れ」
名料理屋「一柳」の主・柳吾から求婚された元の御寮さん、芳。悲しい出来事が続いた「つる家」にとってそれは、漸く訪れた幸せの兆しだった。しかし芳は、なかなか承諾の返事を出来ずにいた。どうやら一人息子の佐兵衛の許しを得てからと、気持ちを固めているらしい――。一方で澪も、清右衛門から掛けられた「お前が身請けするんだ」、この暗示に応える方法があるのか、また料理人としての自らの行く末について、懊悩する日々を送っていた。
第10巻「天の梯」
『食は、人の天なり』――医師・源斉の言葉に触れ、料理人として自らの行く末に決意を固めた澪。どのような料理人を目指し、どんな料理を作り続けることを願うのか。澪の心星は、揺らぐことなく頭上に瞬いていた。その一方で、吉原のあさひ太夫こと幼馴染みの野江の身請けについて奇想天外な一手を編み出して、身請け金4000両を生み出す発想の転換。澪の熱い理解者医師、源斎も進路で大きな悩みを抱えていた。厚い雲を抜け、仰ぎ見る蒼天の美しさをみることは叶うのか!?
2022年8月2日火曜日
高田郁:「みをつくし献立帖」
みをつくし料理帖全10巻に出てきた料理レシピを1冊に纏めたレシピ本だが、ひと工夫してあって、全10巻での一寸したエピソードや思い入れなどが間に入っている。例えば、御台所町という町名や火事で燃えた後の2件目のつる屋のあった俎板橋辺りを舞台設定に選んだ経緯、お化け稲荷というのが実在したことなど興味深い。江戸名所図会を丹念に調べているのですね。大坂での大洪水もきちんと記録していた人がいたんですね。その人の名は曲亭馬琴(滝沢馬琴)だそうです。作中の淸右衛門先生のことのようです。
本題のレシピだが、以前にも紹介したように大体今の物価にして600円から1,000円ほどのお手頃価格で町民向けに商売をしてきたというだけあって、庶民的で家でもまねできそうな簡単レシピが多い。手元に置いておくと何かと便利と思わせるようなレシピが大半だ。作者は自分で手作りで試作を重ね、それを紹介しているところが泣かせる。料理につけた名前が興味と食欲をそそる。いくつか、例を挙げる。
・はてなの飯(鰹を味付けして混ぜご飯に)
・蓮の実の粥(塩で味を調える)
・ぴりから鰹田麩(出汁の鰹の残りを使ったデンブ)
・独活と若布の酢味噌和え
・梅と茗荷とゴマの握り飯
・素揚げの牛蒡
・焼きソラマメ
・白尽くし雪見鍋(鱈、白ネギ、しめじを出汁、しょうゆ、酒でひと茹でし大根おろし、柚子などを散らして完成)
・浅蜊の御神酒蒸し
・山芋の磯部揚げ(すりおろした大和芋を浅草海苔で包んで揚げる)
・忍び瓜(キュウリを軽く茹で、適当な調味料で味付け、シャキシャキ感が良い)
・里芋の黒胡麻餡かけ
・蓮根の射込み
・ありえねぇ(キュウリ、茹で蛸の削ぎ切りを出汁、酢醤油で味を調え、新生姜を針生姜にしてかける)
・大根葉と雑魚の甘辛煮
巻末にレシピを載せてあるも多々あった。
・トロトロ茶碗蒸し、ほっこり酒粕汁、里の白雪、ほろにが蕗ご飯、大根の油焼き、牡蛎の宝船、鯛の福探し、こんがり焼き柿、ふわり菊花雪
料理名は凝っているが内容はどれも家庭料理的なものばかり。とても参考になったがみんな忘れてしまう。
・牡蛎の宝船・・・日高昆布を舟形にし、中に牡蛎を敷き、コンロで焼き、酒蒸しにする。
・鯛の福探し・・・タイの骨を丹念に漁ると9つの小骨が見つかるという。昆布を焼いて船に見立て、中に鯛の焼き物をほぐし易いように
・哀し柚べし・・・又次が残していったゆべし
・
詳細は本を買ってみてください!
吉田修一:「永遠(とは)と横道世之介」
横道世之介シリーズの完結編であることはタイトルから想像がつく。これは新聞の連載で読んだものである。と言っても細切れで読んだわけではない。というのは私は新聞のデジタル版の購読者なので、こういう連載小説はHPのアーカイブスのようなところに全部保管されているのでまとめ読みが可能なので...
-
今日の日経プラス1(土曜版)から引用紹介。 東京ガス(http://www.tokyo-gas.co.jp) の「my Tokyo Gas住まいと暮らしの便利帖」では「寒い冬は特に一度沸かしたお湯を大切に使う”お湯まわりの省エネ”が効果的」など、様々なガス代節約の豆知識が得られ...
-
平成の回顧がこの時期の流行なので、便乗して気になることをボツボツと書いてみたいと思った。 地球は一つ、掛けがえのない地球。人類が消費している数多の資源の中で、最初に資源の枯渇化が危惧されたのが「石油」だった。1970年代には石油資源はあと30数年で枯渇するという説が流布したのは記...
-
画面ではちゃんと見えるのに、印刷すると右端が切れていて読めない・・・・こんな体験は多いですね。今でもどうしたら良いか良く聞かれます。今日はその防止方法をご紹介します。 1)Internet Explorer 7 を使う。 大抵のパソコンは自分でバァージョンアップしなけ...