2013年3月31日日曜日

宮本輝:「慈雨の音」(流転の海 第6部)

宮本輝の魅力的な父親の一代記的長編。第5部を読んでから2年ぐらい経っているような気がします。粗筋さえ朧になっていて読みながら手掛かりをひきだしながら読み進めていく始末でした。この主人公、松坂熊吾は愛媛県南宇和郡一本松の出身でその方言で語らせる言葉が活きていて更に魅力的に見えます。熊吾の波乱万丈振りは結婚してからの転居の激しさからも読み取れます。50歳で伸仁という息子を得て、一人前に育てるまで頑張ろうと張り切るが、時代の変化の激しさに時に翻弄され、転々とする。神戸の御影から南宇和へ、南宇和から大阪市北区中之島の西端へ、そこから富山へ、富山からまた大阪の中之島へ、その間伸仁は尼崎の蘭月ビルへ、そして今は大阪市福島区にと転居を繰り返してる。その転居は事業の成功失敗と連動している。も矢本輝の代表作である「蛍川」はその富山の時代のことを書いたと判るし、「泥の河」の舞台が最初の大阪時代ということも分かって興味深かった。今回の舞台となっている大阪市福島区は奇しくも時運が1993年ごろの大作勤務時代、大阪支店が福島区の鷺洲にあったことから何かと街の様子が思い出されて興味深かった。最初の構想からするともう1回、最終巻が上梓されるはず。読者の勝手な言い分ですが早く出してほしいところです。(どんどん忘れていってしまうので困るのです)

2013年3月30日土曜日

NHKスペシャル:「完全解凍!アイスマン」

去る24日(日)のNHKスペシャルで見過ごした必見の番組。これはいけないという訳で、NHKオンラインで調べてみると、オンデマンドで見られると判った。「見逃し」というジャンルで210円で見ることができました。これはやはり便利ですね。初めてこのサービスを利用してみましたが便利ですね。パソコンで見る方法とテレビで見る方法とがあります。この際でしたので、テレビでも見られるように申し込みをしておくことにしました。申し込むだけで実際にVOD(ビデオ・オン・デマンド)を利用しなければ無料なんですね。ますます、ビデオを持つ必要性が薄れてきますね。ところで、このアイスマン、驚異ですね。5,300年前の人類が標高3,200mのアルプスの山中で1991年に見つかっていたものをこのほど、解凍して胃の内容物を調べたところ、鹿やウサギの肉をハーブで調理したものを食べ、併せて焼いたパンまで出てきたという驚くべき内容でした。高度な医療技術を受けた痕跡や持ち物に施された高度な技術(青銅器文明)も明らかになりました。技術四大文明が栄えたと同じ時代にイタリアとオーストリアとの国境付近で見つかった人のミイラが高度な文明を持った形で見つかったということで、人類の歴史が大きく書き換わるきっかけになるかもしれませんね。

ところでパソコンでこのオンデマンドを使うときに、当然のこととして録画しておくことはできないかと調べてみました。やはりあるのですね。ムービーグラバー3というソフトやMPX8などというソフトが販売されているようです。でも試していませんし、合法なのか違法なのかどうかも分かりません。オンデマンドを利用すると購入後10日間は何度でも見ることができます。

2013年3月27日水曜日

多機能FAX機(ブラザー製)

今やFAX機はプリンターやスキャナー機能など複合的に処理できる機種が圧倒的に多い。我が家のFAX機も買い換えて3年になりますが、ここのところ調子が良くありません。印刷が横に1mm程度ずれて2重になってしまうのです。マニュアルを読み、サポートデスクにもアシストをお願いしましたが、どうしても直りません。サポートデスクではお手上げで、「修理品として出してください。修理費は送料別で14,000円になります」、の一点張りでした。この機種は、FAXの送信は勿論、受信も一々紙媒体を煩わせることなく、すべてパソコンからできるのです。この機種を選んだ当時は、ブラザー製にしかこういう仕様のものはありませんでした。この機種では、パソコンからFAX受信データをパソコンに読み込み、要不要を判断し、必要ならパソコンから返事をメールしたり、FAXで返したりできるので、大変重宝してきました。何よりも不要なものは印刷をすることもないからデータを削除するだけですから、省資源の面でも優れもので、気に入っていました。印刷機能は別に写真印刷用にプリンタがあるのでそちらを使えば事足りるのです。ところで、その複合機能のうちで、パソコンからスキャナ機能を使ってデータを取り込むことに関してだけはこれまで、試したことがありませんでした。今回、必要があって取り込み作業にトライしてみました。オンラインのマニュアルを漁っていたら見つかりました。手元の取扱説明書にはまったく触れていないことなので不親切だなぁと思いました。

1.[スタート]-[すべてのプログラム]-[windowsFAXとスキャン]をクリックする
2.開いた窓の左下にある[スキャン]を選択し、左上のメニューから[新しくスキャン]をクリックする
3.使用するスキャナの選択、スキャンの精度やサイズ、フォーマットなどを指定してスキャンを実行する
4.データは[ドキュメント]-[scanned documents]に名前を付けて保存される。

というわけで、当面この機械をパソコンとの連携で利用し続けられることが確認できました。 という訳で、いらぬ出費を避けられそうで一安心です。14,000円という金額は、これに一寸足せば、同じ仕様の最新型が買える金額です。今は無線LANへの対応もされていて、それはそれで魅力的ではあるのですが。

2013年3月22日金曜日

東京物語

小津安二郎監督の往年の名作のリメイク版。笠智衆が演じた父親を橋爪功が、母親は吉行和子(東山千栄子)。長男は西村雅之(山村総)、長女は夏川結衣(沢村貞子)、次男は妻夫木聡(戦死してしまっていない)、恋人は蒼井優(原節子)。物語は小津のものと同じで、橋爪演じる父親の話しぶりも笠智衆そっくりで、そこまで真似するとなぁ・・といいう感じもありましたが、次男の妻夫木が出てきて現代の東京物語に変身しました。原作では戦争で亡くなり登場しないのですが、本作では3.11後の石巻でボランティア活動をしに行ってそこで恋人蒼井優と出会い、結婚を約束していた。今は舞台美術を手掛けるフリーター的だがその道を自分の進む道と考えて真面目に働く、心優しい息子という役柄になっていて、生き生きしている。この若い2人(現代的な若者像)に長男長女の家庭(少し古い日本的な伝統的な家庭像)を見ながら、自分たちの人生の成果を確かめあう淡々とした時間の流れに身を委ねることができました。後半はじんわりと涙が湧き出てくる佳作でした。

2013年3月17日日曜日

東野圭吾:「秘密」

魂が入れ替わるという奇想天外な設定。妻と娘が安いスキーツアーを利用して里帰りをしようとしたのが災いを招いてしまう。妻は残念ながら命を落としたが、その妻が覆いかぶさるように娘を守ったため、奇跡的に一命をとりとめた。だが、不可解なことに娘の口から妻の言葉が発せられる。妻の魂が乗り移ったかのような・・・・。肉体は小学6年生だが、料理も家事も立派なプロの腕前。そして、折角のやり直しの人生を経験できるのだから、最大限努力しようと頑張り、大学は1流大学の医学部に進み、キャンバスライフを楽しむ。でもこんな現象に陥った自分を医学的に理解しようという意思でもあったのだが・・・。そして娘に肉体と頭脳をお返しする日が近付くことを自覚し始める。いつかどこかで似たようなストーリーを読んだような気がするのですが思い出せません。

2013年3月15日金曜日

小林弘幸:「ゆっくり動くと人生が変わる」

お絵描きの仲間のNさんお薦めの1冊。
なるほどと頷かさせられる生き方ですね。真似できるか自信はないが心懸けたいと痛感させられました。

その要諦は、
・様々な動作をゆっくり行う
・自然と呼吸がゆっくり深くなる
・副交感神経の働きが高まり、自律神経のバランスが整う
・血液が良くなり、体の隅々にまで質の良い血液が流れる
・健康になる
と言っている。
著者の小林弘幸は自律神経研究をしてきた人です。自律神経は交感神経と副交感神経からなり、交感神経は緊張や興奮を司り、副交感神経はリラックス効果を司る神経でこの二つがバランス良く働いているとき、人は好調だと感じるという。この副交感神経の働きは年齢と共に低下する傾向にあり、バランスを崩す原因だと著者は解説しています。副交感神経を活性化させるのに効果的なのが「ゆっくり」という動作、話し方だということです。兎も角、「ゆっくり」は自分も周囲も幸せにする魔法の処方箋のようです。

スローに生きる

 色んな人が励ましてくれる。

テニス仲間のIさん
 去年の春に心筋梗塞で倒れた。AEDとそれを使える経験者、そして近くに良い病院があったおかげで三途の川を途中で引き返してきた、という。毎日の時間が大切だ!と思うという。

別のテニス仲間のKさん
 1年半前、肺がん手術、ステージⅠb。退院してすぐにテニスを再開できたという。早期発見こそ大切。

NPO仲間のSさん
 胃を全摘したが、今は食事もほどほどとれるようになり、病気を感じさせない多方面での活躍ぶり。やはり毎日を大切に生きているのだと思う。

2013年3月9日土曜日

伊集院静:続「大人の流儀」

最近のエッセイ集で東日本大震災後のもの。仙台で実際に被災された経験をつぶさに書いていて、その凄さを追体験できました。この体験が与えた影響の大きさを感じさせられました。エッセイを通して幼少時からの教育やその結果としての人生観などがきちんと身についているのが判って面白い。この人の感覚は納得できます。

2013年3月8日金曜日

伊集院静:「大人の流儀」

続けて、伊集院さんのエッセイを手にしました。色々なテーマで描かれていてそれを読んでいるうちに、この人の若かりし頃(そうでもないか、かなり近い時までも)の無頼振りが浮かび上がってきました。その中の一文には、数年にわたって京都で芸妓さんと暮らしていたらしいことが出ていました。読んだ途端に、先頃読んだ「志賀越みち」の下敷きではないかと思ったりもしました。有名な夏目雅子との出会いから別れまでについて触れた一文には身につまされてしんみりと読まさせてもらいました。別れの辛さが切ない。全然別の感想ですが、読み進むうちに常盤新平の青春時代と重ね合わさってきます。青春時代の無駄・無茶がこの人たちの心の栄養になって色んなことを言わせたり、書かせたりしているんでしょうね。他人に影響を与える言動はそんな体験を基にしてされているので、ある種の説得力を持っているんですね。

2013年3月7日木曜日

柴田トヨさんの詩(その1)

返事
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風が 耳元で
「もうそろそろ
あの世に
行きましょう」
なんて 猫撫で声で
誘うのよ

だから私
すぐに返事したの
「あと少し
こっちに居るわ
やり残した
事があるから」

風は
困った顔をして
すーっと帰って行った

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
柴田トヨさんが98歳で出版した詩集の中からお気に入りのものです。</pre>

2013年3月6日水曜日

先週のニュースから

1.体罰
親として子育て中に子供叩いたことがあっただろうか?そういう衝動に駆られたことは記憶にあるが、それを実行したかどうかは覚えていない。たぶん無かったように思う。そういう衝動に駆られたのは確か、長男が高校生になってからだったような気がする。一流までにはいかないが一応は進学校として名が通っていたが、折角その学校に入れたのですが、部活にサッカーを選んで練習に明け暮れ、成績はどんどん低下していきました。部活をやめるかどうかで大モメしましたが、決して親の言うことを聞きませんでした。そのとkには息子の方が強そうで腕力でもかなわないなぁと感じながら怒っていたことは鮮明に思い出せます。まして体罰で思いを通すというのは最低の説得術だと思います。スポーツ界であれば、コーチングの技術を学び、説得の技術をマスターし、人間心理学を学びしてやるべきでしょう。

2.ホワイトアウト
北海道の吹雪と大雪はこれも未曾有のことだったのでしょうか?柵サヤフ武器に離れているはずの地元の人たちが9名も凍死で命を落としました。悲惨な話ですね。八甲田山死の彷徨を思い出します。差額事故では深い霧がやはり道を迷わせ、多くの遭難事故を記録してきました。ホワイトアウトは怖いです。車と暖房の快適な現代生活が究極の自然の猛威に対する恐れを忘れた結果といえるのでしょうが、痛ましいことでした。

3.気球炎上
エジプトはルクソールでの事故。行ったこともありませんが、こういう事故に遭遇する可能性はだれにでも起こりうることでしょうね。国内でも遊園地の乗り物で時々起る事故と同じですね。北海道の吹雪の事故も同じですが、我々が生きているということは常に「死と隣り合わせで」であって、独立した生とか、死とかが存在しているのではないということですね。

コインの裏表、反対側の世界が必ずあるということですね。美は醜と、善は悪と、陰は陽と、長いは短いと、軽いは重いと対になっていますね。先日来から読んでいる加島祥三の「老子」の解説本によく出てきます。だから?無常観とは違います。今ある自分をそのまま受け入れる、ということ。己の欲するままに従うということ。後悔しない一瞬一瞬を過ごすということ。それを考えていきたいと思うのです。

2013年3月5日火曜日

映画:居酒屋兆治

本当は映画ではなく、ビデオ鑑賞でした。ビッグネームが目白押しでした。
1983年製作という。道理で高倉健、加藤登紀子、田中邦衛、大原麗子、みな若い。 降旗康男監督。高倉健の世界は今も昔も変わらないんですねー。ひたむきに不器用に生きていく男を演じると本当にそう見えてくる。

2013年3月4日月曜日

伊集院静:「志賀越みち」

この人の本も始めてです。図書館で手持ちの本が少なかったので本棚を物色していて、何となく手に取った1冊でした。タイトルの「志賀」という地名らしい名前、目次の中に金沢が出てくることから石川県を舞台にした物らしいと推測したのが選んだ理由でした。読み始めると、出だしで「志賀」というのが滋賀県の大津辺りから京都へと峠を越えていく山道の名前と判りました。そう、この物語は京都は祇園を舞台にした大学1年生の初恋物語でした。時代はほとんど自分の生きた時代と同じころのようでした。純粋な学生の一途な恋が周囲の暖かい眼差しに守られて・・・しかし、祇園という1000年の歴史を持つ花街の因習と伝統の檻のなかで悩み、もがきます。こういうジャンルの小説はあまり読みませんでしたね。「あの日パナマホテルで」とジャンルは同じなのかな?ちょっと違うように思います。

2013年3月2日土曜日

春が来た

毎年2月になると、朝夕新聞を取りに玄関に立つとき、必ずする癖のようなものがあります。それは、ウグイスの鳴き声を探ることです。春の兆しを明確に感じるのです。梅の花は何故か、開花に凄いばらつきを感じるのです。その点、ウグイスは自宅でという意味で定点観測になっているからでしょう。そのウグイスの鳴き声を昨日の朝、確認できたのです。3月1日です。これまでで最も遅い記録かな?と思い、過去のブログをひも解いてみました。何と驚くことに、2012年は3月6日、2011年は2月28日で例年とあまり変わらないという事が判りました。2008年では2月17日に確認できていました。色々な条件で変わるのですね。

吉田修一:「永遠(とは)と横道世之介」

 横道世之介シリーズの完結編であることはタイトルから想像がつく。これは新聞の連載で読んだものである。と言っても細切れで読んだわけではない。というのは私は新聞のデジタル版の購読者なので、こういう連載小説はHPのアーカイブスのようなところに全部保管されているのでまとめ読みが可能なので...